モジュール変換効率は発電量を表す指標ではありません
最近、コロナ禍の巣ごもり消費からか、卒FIT向け蓄電池の需要とは別に、新設の太陽光発電システム+蓄電池のセットの引き合いが増えています。
流石にこのご時世で蓄電池を付けずに太陽光発電システムのみの設置を目指すお客様はいませんが、コロナ禍の令和三年になってもなお、訪問販売だましトークの定番、「変換効率」トークに洗脳されたお客様が増えてきています。
パナソニックが太陽光発電モジュールの生産撤退を発表したように、旧三洋電機時代からHITモジュールのセールスでよく使われてきた「変換効率」トークはもうとっくに死滅したものと思っていましたが、ここに来て急速に増殖して太陽光をお求めのお客様を惑わせる要因になっています。
よって、ここで、あらためてこの「変換効率」の間違った理解について説明しておきます。
はっきり言います。
太陽光モジュールの「変換効率」とは、「面積」を表す指標でしかありません。発電量を表す指標ではありません。
訪問販売業者は高い金額で売ることを正当化するために、モジュール変換効率が高いと発電量が増えるかのような錯覚を起こさせて高額で契約しようとします。
「変換効率」が高いモジュールは、252Wのモジュールがまるで300Wに化けるかのように。
私はモジュールの変換効率にこだわるお客様が現れた場合、次のようなクイズを出してお客様に「勘違い」に気づいていただくようにしています。
つぎのA、Bの太陽光モジュールのうち、より多く発電するのはどちらのモジュールですか?
A「変換効率10%の200Wのモジュール」
B「変換効率15%の200Wのモジュール」
答え:どちらも同じ(200W)
お客様10人中ほぼ10人近くの方が「B」と答えますが、どんなに変換効率が良くてもBは200Wのモジュールなのです。AはBよりも変換効率が低いですが、200Wのモジュールです。
私の質問は「発電量」を聞いているわけですから、AもBも200Wのモジュールなので、答えは「同じ」です。
ほとんどの方はこの「同じ」という答えを聞いた瞬間に、騙されていたことにお気づきになります。
変換効率はあくまで「面積」を表す指標なのです。メーカーのカタログにきちんと書いてあります。
「モジュール変換効率(%)」=「モジュール公称最大出力(W)×100」÷「モジュール面積(㎡)×1000W/㎡」
つまり、モジュール出力をモジュール面積で割った値、すなわちモジュール1枚の大きさを指数化したものです。
変換効率が高ければ高いほど、モジュールの大きさ(面積)はコンパクトである、と言うことは出来ます。
天邪鬼な方はここで食い下がってきます。
「面積当たりの発電量が大きいなら、変換効率が高い方が発電量が多くなるはずでしょ?」
このご主張は一見正しく聞こえます。
が、よく考えてみて下さい。
しかし、実際は「モジュール」で、各メーカーごとに形や大きさなどの寸法・仕様や設置の方法などが異なります。
また、設置する場所(屋根)の形も大きさも物件ごとに異なります。
太陽光モジュールは1枚の出力で比較するのではなく、実際の屋根寸法図に割り付けをしてみて合計出力で比較するものです。
実際に割り付けしてみると、メーカーごとに異なる割り付け枚数になります。モジュール寸法や設置方法(工法)が異なるからです。
同じ屋根でもメーカーXだと3.5kWしか載らないのに、メーカーYは4.2kWまで載ります、などということはざらにあります。
実際に割り付けした結果を比較しないと意味がありません。
「変換効率トーク」は、その営業員が勧めるメーカーの割り付け後の総出力(kW数)が他メーカーと比べて劣る場合によく使われます。
不利な部分をお客様の頭を混乱させることで分からないようにしてしまう、いわゆる「ごまかし」のトークなのです。
「変換効率トーク」の実例としてよく出てくるのは、「三角モジュールは変換効率が悪い」と営業が主張するケースです。
確かに変換効率を四角いモジュールと三角モジュールとを比べると、三角モジュールは劣ります。
しかし、モジュール内部に使用されている「セル」は四角も三角も同じものを使用しています。同じセルを使用している以上、発電量が劣ることはありません。
三角モジュールは、内部のセルの割り付けにデッドスペースが出来るため、どうしても変換効率を算出すると低い表示になってしまいますが、あくまで形状の関係で出力(W数)に比べてモジュールの面積が大きめになるだけで、発電量が落ちるわけではありません。
はっきり言って、三角モジュールが「効率が悪い」のなら、四角のモジュールも同様に「効率が悪く」ないとおかしいことになりますし、三角モジュールを載せずに四角モジュールだけで割り付けした場合、屋根面にモジュールの空白地帯がたくさん出来てしまいます。その方がよっぽど非効率です。
営業員が「変換効率」を主張し始めたら、お客様を騙そうとしている、と思って差し支えないでしょう。
即刻「お断り」あるいは「キャンセル」すべきです。
用松 俊彦