「自社施工」と「外注」について
最近、商談で「自社施工」かどうかを気にされるお客様が多いです。
はっきり申し上げます。
「自社施工」かどうかを質問すること自体が無意味です。
そこは気にするポイントではない、ということです。
どこの販売店も自社に職人を置いていません。
実際に現場で工事を担当するのは「職人」です。
「自社施工」かどうかを質問される方々によく考えていただきたいのは、職人の世界は腕に自信があれば、みな「独立」して自分で稼ぐようになるということです。
どこかの会社に属して仕事をしても、雇っている会社にピンハネされるので、同じ仕事内容でも実入りが少なくなってしまいます。だから、腕に覚えのある人は独立して独りで稼ぐわけです。実際、大工工事や設備工事、電気工事の職人はほとんどが一人親方です。
会社に属している職人は、仕事をしてもしなくても日当がもらえることになります。一つの仕事を1日で終わらせても2日かけても給与が変わらないのだから、スピーディーに仕事を進めようとしなくなります。仕事が雑でも会社が仕事を供給してくれるから、レベルアップもしなくなります。仕事で失敗しても会社が責任を取ってくれるので、責任感が希薄になります。
独立した職人の場合、ヘマな仕事をすると次の注文がもらえなくなるから、おのずと仕事がスピーディーでかつ美しい、責任感ある仕上げになります。
職人への支払いは「1日いくら」ではなくて「1件の工事でいくら」という計算です。よって1日かけても2日かけても同じ「工事1件」になるから出来るだけ早く仕事を終えるよう努力するから、仕事もきびきびスピーディー。
会社お抱えの職人がいる場合、その職人を遊ばせるわけにはいかないけれど、高度成長期じゃあるまいし、そんなに毎日工事の仕事があるわけでもありません。しかし雇用している以上給料を支払わねばならない。よって、人件費がアップします。
一人親方で腕の良い職人を選んで工事をさせた方が工賃も安いうえにスピーディーで仕事もきれい。雇う側も工事した件数だけ支払えばよいので、コストを圧縮できる。雇われる職人側も一つの会社とつながるよりも、できるだけ多くの会社とつながって毎日仕事が途切れないようにした方が儲かる。
我々工事を依頼する側も工賃が安くてレベルが高い職人を使わないと、会社の損益や工事の評判に関わるから、価格競争力がなくなるから、職人を自社で雇おうなどとは思いません。
中にはインターネットのいいかげんなサイトに書かれていることを耳学問で勘違いされている方がおられるかもしれません。下請け業者を使うと「中間マージンが入るから見積もりが安くならない」とか「責任感がない」とか「工事のレベルが下がる」とか・・・。実際は逆です。
下請け業者を使うから「中間マージンが省ける」し「責任施工」で「工事の水準が上がる」のです。ひいては安い見積もりでスピーディーかつ質の高い工事が出来る、というわけです。
「自社施工だから安心」などといういい加減な広告表示は、はっきり言って失笑ものです。
業界事情を知っている私がお施主様の立場になった場合、「自社施工です」とか営業に主張されたら、どんないい加減な工事をされるのかと思うと不安で仕方なくなりますよ。
用松 俊彦